ピロリ菌感染
ピロリ菌とは?
正式名は、ヘリコバクター・ピロリという細菌で、1983年に発見されました。ピロリ菌は、5歳くらいまでの幼少期に井戸水や親からの口移しなど家族内からの感染が考えられています。このピロリ菌による感染からほとんどの方に(萎縮性)胃炎が発生し、胃潰瘍や胃癌が生じる事があります。
近年は、ピロリ菌の除菌や上下水道の整備や口移しなどの危険などの啓蒙により、感染率は低下しており、胃癌は減少傾向になっています。若年齢でのピロリ菌除菌が望ましいですが、高齢者でもピロリ菌感染者では、抗血小板薬による胃潰瘍のリスクが高くなるため、ピロリ菌除菌をおすすめしています。
また、ピロリ菌感染は、全身にも悪影響を及ぼす可能性のある菌である事が解明されつつあり、日本ヘリコバクター学会でもすべてのヘリコバクター・ピロリ菌感染者に対して、除菌治療を行うよう推奨されています。
ピロリ菌除菌治療の流れ
① 内視鏡検査(胃カメラ)
↓
② 感染診断
↓
③ 除菌治療
↓
④ 除菌効果判定
ピロリ菌検査
内視鏡検査時に胃粘膜組織の採取を必要とする方法と内視鏡検査を必要としない方法に分かれます。
内視鏡検査で胃粘膜を採取が必要な方法
- 採取した組織を特殊な液に添加して反応を判断する迅速ウレアーゼ検査
- 採取した組織からピロリ菌培養検査
- 採取した組織にピロリ菌が存在するかを顕微鏡で観察する組織鏡検法
内視鏡検査を必要としない方法
- 血中ピロリ菌抗体検査
- 便中ピロリ菌抗原検査
- 尿中ピロリ菌抗体検査
- 尿素呼気検査
- 血清ペプシノゲン法(ABC健診)
除菌治療の対象となる方
- ヘリコバクター・ピロリ菌感染胃炎
- 胃・十二指腸潰瘍(瘢痕)
- 胃MALTリンパ腫
- 早期胃癌と診断され内視鏡的粘膜切除後
- 特発性血小板減少性紫斑病
ピロリ菌除菌治療
ピロリ菌除菌治療は、「胃癌予防法」と考えられています。内視鏡検査を行い、ピロリ菌による「ヘリコバクター・ピロリ菌感染胃炎」、「胃・十二指腸潰瘍」、「胃MALTリンパ腫」、「早期胃癌に対する内視鏡治療後」、「特発性血小板減少性紫斑病」が認められれば、厚生労働省の認めた除菌治療が保険適応で行えます。内服治療中は、飲酒による薬の効果が弱くなり、除菌治療効果が低くなるため禁酒が必要となります。また、メトロニダゾール内服中は、飲酒により悪酔いするため内服中と内服終了後3日間は禁酒が必要となります。
一次除菌治療として、薬剤(抗生剤2種類:ペニシリン系およびクラリスロマイシンと胃薬1種類)朝夕2回7日間の内服で約80%の方が除菌できます。近年は、抗生剤に対する耐性菌の増加が問題となっています。ピロリ菌除菌判定は、内服終了後から4週間以上経過してからの判定を行います。
しかし、除菌できなかった場合には、二次除菌治療として、種類の違う薬剤(抗生剤2種類:ペニシリン系およびメトロニダゾールと胃薬1種類)を用いて朝夕2回7日間の内服治療を行います。
保険適応外:自費診療
①三次除菌・四次除菌治療を希望される方
- 三次除菌治療(抗生剤2種類:ペニシリン系およびシタフロキサシンおよび胃薬1種類)×7日間
- 四次除菌治療(抗生剤1種類:ペニシリン系および胃薬1種類)×14日間
② ペニシリンアレルギーの方
- 一次除菌治療(抗生剤2種類:メトロニダゾール+クラリスロマイシンと胃薬1種類)
- 二次除菌治療(抗生剤2種類:メトロニダゾール+シタフロキサシンと胃薬1種類)
③ ピロリ菌感染の有無だけを知りたい方
除菌時の副作用
約30%の方に軟便、下痢、味覚異常、口内炎などの軽い症状の報告がありますが、一過性であり服薬中止後には改善がみられます。また、痒みを伴う発疹(薬疹)などのアレルギー反応が見られた場合には、すぐに服薬を中止しご連絡下さい。
ピロリ菌除菌治療後
ピロリ菌感染による長期間の胃炎により、ピロリ菌除菌後も胃癌が発生してくる事がある事が分かっていますので、がんの早期発見には除菌後も定期的な検査が必要になります。
ピロリ菌除菌により、胃酸分泌が改善する事で約10%の方に逆流性食道炎が起きる事があります。多くは数ヶ月で改善しますが、中には症状により胃薬の内服が必要となる場合があります。食欲が増して体重が増加する方もいます。